同時死亡の推定
同時死亡の推定
通常、ある人が死亡した日時と、その人の相続人となるべき人の死亡した日時には時間的な差があるのが一般的です。 さらにいうと、実際に複数人に同一危難が生じた場合であっても、その複数人が「同一年月日時分」に死亡することは極めて稀であるといえます。
しかし、災害や事故などによって、複数人が死亡した場合にそれぞれの死亡の前後が分からない場合があります。
例えばある親子が同一危難に遭遇し、親子双方が死亡したというような場合に、「親が先に死亡した場合」と、「子が先に死亡した場合」で親又は子の死亡の前後のごくわずかな時間差によって、相続関係に大きく影響が生じる場合があります。(※下記図1参照)
そこで日本の民法では、それぞれの死亡時刻を証明するのが困難であり、その死亡時刻をめぐる利害関係者が存在している以上、同時に死亡したと推定することが、最も公平で理論的にも有用であるとの考え方を採用しています。尚、数人の死亡は、同一の事故や原因による必要はなく、別々の場所や原因で亡くなった場合でも、死亡の前後が不明であれば、同時死亡の推定がなされます。
同時死亡というのは、死亡の前後を区別せず、死亡者相互の相続を認めないということですので、同時に死亡したと推定された者の間においては、相続関係は生じないこととなります。
ただし、あくまで推定であるため、年齢・体力・死体発見場所・医学的推定などを判断資料とする反対立証がなされる場合には、この同時死亡の推定は覆されることとなります。
【 図1 】
*A(母)、B(父)、C(子)、D(祖母)とした場合
(1)BとCが同一危機に遭遇して死亡した場合、CがBより先に死亡したと仮定するとBの財産はAが3分の2、Dが3分の1相続する。(民法900)
(2)これに対し、Bが先に死亡したと仮定すると一旦Bの財産はAへ2分の1、Cへ2分の1相続され、次いでCの死亡によって結局Aが全部相続することになる。(民法900.889)