相続放棄のよくある質問

相続放棄に関するよくある質問

Q 相続人全員が相続放棄をしてしまった為、相続人が誰もいなくなってしまった場合、又は最初から相続人が誰もいないような場合、相続財産はどうなるのでしょうか?

このような場合は、最終的に誰も引き継ぐ人がいないのであれば、相続財産は国庫に帰属することになります。
もっとも本当に相続人がいないのか、相続人がいない場合に相続財産の分与を請求することが可能となる特別縁故者(相続人ではないが、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者など被相続人の生前、被相続人とあたかも相続人であったかのように緊密な関係があった人)がいるのではないかといった事項は誰かがきちんと調査をしなければなりませんし、債権者がいるならば可能な範囲で弁済を行うことが必要となってくるでしょう。
相続放棄をすると最初から相続人ではなかったことになりますから、相続財産が残っていたとしても、その後でどうなろうが関係ないということになりそうですが、実はそうではありません。
相続放棄をした者が、その管理下にあった相続財産の管理までも即座に放棄できるとなると、他の相続人や債権者にとって不都合がありますから、民法は相続放棄をした者の相続財産の管理継続義務を規定しています。相続放棄によって相続人が1人もいなくなる場合であれば、最後に放棄をした者がこの義務を負うことになりますから、しかるべき手続をとらなければ相続放棄した後も思わぬ責任を追及されてしまうかもしれません。
こういった問題に対処するのが“相続財産管理人”です。相続財産管理人とは、相続人の存否が不明の場合に家庭裁判所によって選任され、相続人の捜索や債権者への弁済、相続財産の管理を行う者で、通常は弁護士又は司法書士が就任します。最後に相続放棄をした者の財産管理義務は、この相続財産管理人が相続財産の管理を始められるようになれば終了します。
なお、相続放棄手続が無事に終了しても、その後に相続財産を処分した場合、当該相続人の処分行為は単純承認とみなされ、相続放棄の効果は覆ってしまうことにもなりかねませんので、注意が必要となります。

Q 相続放棄申述受理の後に遺産を処分したらどうなりますか?

民法921条3号は、相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは単純承認したものとみなすものと規定しています。

つまり、相続人が一度は有効に相続放棄を行っても、その後に相続財産を処分した場合、当該相続人の処分行為は単純承認とみなされ、相続放棄の効果は覆ってしまうことになりますので、くれぐれも注意が必要です。

Q 相続人で、「相続を放棄します」という念書を交わしたら相続放棄できますか?

相続人間で、相続人が相続権を放棄するという約束をするのは有効です。 実際そのような遺産分割も多くなされています。しかし、法的な効力を生じる相続放棄は、必ず家庭裁判所に申述書という書面を提出して行う必要があります。相続人の間で「相続権を放棄します」などと念書を書いて約束しても、債権者から借金の返済を迫られた場合、支払いを拒否することはできません。

Q 遺産分割協議で、相続人中の一人が「借金を一切相続しない」と決めたら、支払いを拒否できますか?

原則として支払いを拒否することはできません。例えば、甲と乙との間で遺産分割協議を行い、「甲は相続しない。乙が全ての預貯金及び不動産を相続し、その代り借金も乙が全て相続する」といった遺産分割協議が成立した場合でも、その後乙が返済をしなかった場合、債権者は甲に対して、甲の相続分に従った債務の弁済を請求でき、甲は先の遺産分割協議を理由にこれ拒否することはできません。

Q 相続放棄をした後に、多額の財産が発見された場合、その財産を相続できますか?

相続放棄が家庭裁判所に受理されたら、借金を相続しないだけではなく、預貯金や不動産といったプラスの財産も相続することはできません。仮に、マイナスの財産を上回るプラスの財産が後から見つかっても、残念ながら相続することはできません。一度相続放棄をしてしまったら、撤回はできないからです。

Q 相続放棄ができる期間は、なぜ3ヶ月という短い期間なのでしょうか?

いつまでも相続をするのか放棄をするのかが決まらないと、死亡した人(被相続人)の債権者は、誰に借金の支払いを請求すればよいのかがはっきりせず困ってしまいます。また、他の相続人も、いつまでも遺産分割ができないのでは困ります。そのため、相続放棄をすることができる期間に制限を設けているのです。なお、この期間は各相続人ごとに個別に進行します。また、場合によっては、期間を伸長できたり、期間経過後にも相続放棄が認められることがあります。あきらめずに、まずはご相談ください。

Q 借金がどれくらいあるのか分らないのですが、相続放棄したほうがいいのでしょうか?

あきらかに借金が上回る恐れがあるのであれば、相続放棄をした方が無難でしょう。プラスの財産が多いのか、マイナスの財産のほうが多いのか分らないような場合には、限定承認という選択肢もあります。また、3ヶ月の期間だけでは、 相続の承認や放棄の判断をするための相続財産の調査ができないような場合には、相続放棄の申述期間を延長する制度もありますので、一度ご相談ください。

Q 被相続人が連帯保証人になっていたのですが、相続放棄をするべきでしょうか?

連帯保証人である限り、突然主たる債務者が破産等で支払いができなくなり、代わって債権者からの請求を受けることがあるかもしれません。保証契約の内容はどのようになっているのか、いくらの債務が残っているのか、主たる債務者はどのような人かなどを調査し、まずは検討してみる必要があります。場合によっては相続放棄をしたほうが無難かもしれません。

Q 親が相続放棄をした場合、子供である私が代襲相続をすることができますか?

相続放棄の場合には代襲相続が認められません。相続放棄をした場合は、最初から相続人ではなかったとみなされるのですから、その子供が親に代わって代襲相続をすることもできないことになります。

Q 相続放棄をすると、生命保険金や遺族年金は受け取ることは出来なくなりますか?

生命保険金については、受取人として「特定の相続人」が指定してある場合には、その相続人の固有の財産となりますので、相続放棄をしても受け取ることが出来ます。遺族年金についても各法律により遺族が受給権者として定められていますので、その者の固有の権利となることから、相続放棄をしても受け取ることが出来ます。

Q 私(母)が未成年の子供を代理して相続放棄手続きをすることが出来ますか?

たとえば親権者が相続放棄をした後に、未成年者全員を代理して相続放棄をする場合、また、親権者と未成年者全員が同時に相続放棄をする場合には未成年者を代理して手続きすることができます。
上記以外の場合、未成年者の代理人として、特別代理人を選任しなければならないケースもあります。

Q 父が亡くなって3ヶ月経過してから、督促状が届き、この時に初めて父に借金があることを知りました。3ヶ月経過してしまっているので、相続放棄は出来ないのでしょうか?

相続放棄の熟慮期間である3ヶ月は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算されますが、この「自己のために相続の開始があったことを知った時」については「相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識したときまたは通常これを認識しうべき時」とする判例もあります。ご質問のようなケースの場合、3ヶ月経過後でも相続放棄をすることが可能な場合もあります。

Q 相続を承認するか、放棄をするか悩んでいるのですが、被相続人の現金はどうすればいいですか?

処分をせずに保管ください。処分をすると相続放棄が出来なくなる可能性があります。また相続放棄後でも相続財産である現金を処分すると、相続放棄の効果は覆ってしまうことにもなりかねませんので、注意が必要となります。
但し、被相続人の葬式費用などは常識の範囲の金額であれば使用をしても後日の相続放棄は認められます。

Q 故人の葬式費用は被相続人の財産から支出すると相続放棄ができなくなくなりますか?

常識の範囲の金額であれば使用をしても後日の相続放棄は認められます。
相続放棄をお考えの場合、特別立派な葬儀を営まれることは控えた方がいいでしょう。また後日わかるように、領収書等を保管しておいて下さい。

Q 香典は使っても問題ないでしょうか?

処分されても問題ないと思われます。香典は、一般的に相互扶助の精神に基づく慣習的なものとして、喪主に贈られるものです。葬式費用の一部を互いに負担し、喪家負担を軽くすることを目的として喪主に贈られるもので、相続財産ではありません。

Q 被相続人が通っていた病院の費用の請求がきました。支払わないといけないでしょうか?

相続放棄をするのであれば支払う必要はありません。もし支払いする場合でも、被相続人の財産から支払うことはお控え下さい。